日立製作所と、近畿エリアの医薬品卸売会社ケーエスケーは2026年10月22日、医薬品の配送業務をデジタルで効率化する実証(PoC)を9月末に完了したと発表しました。ドライバーが急に休んだときに配送ルートを自動で組み直す機能で、営業担当者が代わりに配送していた手間を60%削減。2026年11月から、ケーエスケーの支店で順次稼働させます。
ここがポイント
- 使うのは、日立の物流向けソリューション「Hitachi Digital Solution for Logistics」(HDSL)。ふだんは決まった配送ルートを守りつつ、欠員が出たときだけ、配送先・配送時間・車両が入れるかどうか・積載量・各ルートの余力を見て、空きのあるルートへ自動で振り分けます(「ポイントダイナミック」機能)。
- 実証の結果、営業担当者による代行配送の工数を60%削減(対象支店の配送担当者の稼働状況から算出)。
- スマホでお客さまのNFCカードを読み取る「電子受領」も導入。あらかじめ登録した受取人の情報と照らし合わせ、受け取りの日時と証跡を自動で記録します。なりすましや誤配送を防ぎ、紙の伝票の手間も減らします。
- 2026年11月から、ケーエスケーの支店で順次稼働。ケーエスケーは近畿に32の営業拠点と3つの物流センターを持つ医薬品卸です。
何が変わるのか
医薬品の配送は、病院や薬局が必要なときに確実に届けることが求められる仕事です。ところが物流の2024年問題に代表されるドライバー不足のなか、ケーエスケーではドライバーが休むと営業担当者が代わりに配送に出ることが多く、本来のお客さま対応の時間が削られていました。ルートの組み直しも、ベテランの配車担当者の経験と勘に頼っていたといいます。
今回のしくみでは、「いつもは固定ルート、困ったときだけシステムが組み直す」という使い方をしている点がポイントです。現場の慣れたやり方を大きく変えずに、急な欠員という「一番困る場面」だけをデジタルで支えます。さらに、NFCカードをスマホでタッチする電子受領で、紙の受領書のやりとりも減らします。
DXマスターの視点
物流DXというと、全部のルートを毎日コンピューターで最適化するイメージがあるかもしれません。今回の事例は、ベテランの勘に頼っていた「例外への対応」だけをシステムに任せるという、現場になじみやすい進め方です。「代行配送の工数60%減」のように、効果を数字で確かめてから全支店に広げる流れも、ほかの業界の参考になります。
人手不足が続くなかで、配送・受け取り・記録をつなげてデジタル化することは、医薬品にかぎらず多くの業界の課題です。DXマスター(DX MASTER)では、こうした現場発の導入事例を今後も紹介していきます。データと最適化の技術をどう現場に生かすかは、AI活用を考える第一歩にもなります。
DX検定に出るかも? 関連キーワード
- 物流の2024年問題…ドライバーの残業の上限が決まったことで、モノを運ぶ力が足りなくなる心配のこと
- NFC…スマホやカードを近づけるだけでデータをやりとりできる近距離無線通信
- 配送ルート最適化…配送先・時間・車の積載量などの条件から、効率のよい回り方を計算すること