地方銀行の「AI活用」が、一部の部署の試行から全員の仕事へと広がっています。八十二長野銀行は2026年11月4日、独自の「AI・データ基盤」の稼働を始め、その上で開発した「資料作成AI」と「マイデータAI」を、全役職員が業務で使い始めたと発表しました。AIを安全に使うための行内ルール「AI管理規程」も同時に制定しています。DXマスター(DX MASTER)が、銀行ならではのAI事例として紹介します。
ここがポイント
- 2026年2月に構築着手を公表した「AI・データ基盤」が稼働。銀行専用の安全な環境でAIを一元管理し、情報漏えいや不正利用を防ぐ土台です。
- 独自AIの第一弾は2つ。資料の目的と読み手を指定するだけで構成を考え、たたき台を作る「資料作成AI」と、指定した資料や記事の内容だけをもとに質問に答える「マイデータAI」です。
- 使うのは全役職員。情報収集や資料作成を効率化し、お客さまとの対話や提案の充実につなげるとしています。
- 「AI管理規程」を制定。2024年5月に定めた「八十二グループAIポリシー」をもとに、行内で使うAIを一覧で管理し、個人情報や著作権などのリスクを、利用部署とリスク管理部署の両方が利用開始後も点検します。
- 今後は、AIが職員と協働して業務を進める「AIエージェント」の活用もさらに進める方針です。
何が変わるのか
一般向けの生成AIは便利ですが、銀行が扱うのはお客さまの大切な情報です。そのまま使うと、AIごとに安全対策や管理方法がばらばらになり、回答も一般的な知識が中心で、銀行が積み上げてきた知識やノウハウが反映されにくいという課題がありました。
八十二長野銀行は、AIを個別に入れるのではなく、共通の土台(データ基盤)を先につくり、その上にAIを載せていくやり方を選びました。基盤に行内の知識を蓄積・更新することで回答の質を高め、作った機能を再利用して新しいAIを素早く開発できるとしています。「マイデータAI」のように指定した資料だけをもとに答え、根拠を確かめながら使えるしくみは、AIがもっともらしい誤りを答える「ハルシネーション」への備えとしても注目です。
DXマスターの視点
この事例のポイントは、「便利なAIツールを配る」前に「安全に使える土台とルール」を整えたことです。基盤(技術)と管理規程(ルール)の両輪で進める形は、金融に限らず、個人情報を扱う自治体や医療、保険などにも参考になります。
社内でAIを広げると、社員が勝手に外部のAIを使う「シャドーAI」や、使っているAIを誰も把握していない状態が起こりがちです。「AIを一覧で管理する」という地道なルールこそ、AI活用を全社に広げるための近道と言えます。AIをどう業務に生かすか――その答えは、まずデータと管理の整理から始まります。