工作機械メーカーのヤマザキマザックと、AI企業のABEJAは2026年10月16日、製造現場へのフィジカルAIの実装に向けて業務連携し、共同開発を始めたと発表しました。フィジカルAIとは、周りの状況をAIが認識・判断し、ロボットや設備を自分で考えて動かす技術のことです。ABEJAのAI基盤「ABEJA Platform」を使い、ヤマザキマザックの顧客企業の生産性向上とコスト削減を支援します。
ここがポイント
- 加工工程を考えるAIエージェント:部品をどんな方法・順番・切削条件で削るか(工程設計)を、AIが自動で組み立てて提案します。
- 生産スケジュールを考えるAIエージェント:生産計画、設備の稼働状況、部材の在庫、現場のノウハウをふまえて、工作機械や自動化システムの段取りを提案。部材不足や特急の注文が入ったときも、すばやく組み直せるようにします。
- ロボット行動学習環境:ロボットや搬送装置が自分で動けるよう、現場の作業データ集めからAIの学習・評価、実機での動作確認までを一つの流れで行う環境をつくります。
- AIは導入後も現場のデータやノウハウを学び続けるHuman in the Loop(人が確認しながらAIを育てる仕組み)の考え方で、顧客の工場ごとの環境に合わせて賢くなっていきます。
- 開発したAIエージェントは、将来的にヤマザキマザックの工作機械や自動化システムに載せる計画です。
何が新しいのか
工作機械を使った部品づくりでは、「どう削るか」「どの機械でいつ作るか」を決める仕事の多くが、ベテランの経験と勘に支えられてきました。発表では、航空宇宙・半導体・EVなどの成長分野の広がりで、現場にはより高い生産性と柔軟さが求められる一方、人手不足と技能継承が大きな課題になっていると説明しています。
今回の取り組みは、言葉にしにくい熟練者のノウハウ(暗黙知)をAIエージェントに学ばせて会社全体で使えるようにすることと、その判断にもとづいて機械やロボットが実際に動くところまでをつなげようとしている点が新しいところです。ABEJAは、AIをPoC(試しに使ってみる段階)で終わらせず、最初から実際の業務で使う「ゼロPoC」を掲げています。
DXマスターの視点
生成AIの次の大きな流れとして注目されているのが、AIが画面の中だけでなく現実の機械を動かすフィジカルAIです。日本は工作機械やロボットに強いメーカーが多く、そこにAIを組み合わせる今回のような提携は、日本の製造業の強みを生かす動きといえます。
ポイントは、いきなり「全自動の工場」をめざすのではなく、工程設計や生産計画のような「考える仕事」をAIが提案し、人が確かめるところから始める点です。熟練者が少なくなっても品質をそろえ、急な注文にも強い工場をつくれるか。機械メーカーが自社のCNC工作機械にAIを載せて届けるかたちは、中小の工場にもAI活用を広げる近道になるかもしれません。DXマスター(DX MASTER)では、実際の工作機械への搭載の行方も追っていきます。